業種別 約6分で読めます

ホテルのブランディングの進め方|コンセプトを決めた後に何をするか

ホテルのブランディングは、コンセプトを言語化して終わりではありません。決めた一行を客室・接客・発信の判断基準にまで落とし、運用され続ける状態にするまでの進め方を、宿泊施設の実務から整理します。

ホテルのブランディングについて調べると、たいてい同じ順序で説明されます。現状分析をして、ターゲットを決めて、コンセプトを言語化する。

この順序は正しいのですが、多くの施設が止まるのはその後です。コンセプトはできた。それで、明日から現場は何を変えればいいのか。

ここでは、決めた一行を実際の運用に落とすまでの進め方を扱います。

ホテルのブランディングの進め方は、コンセプトを決めてからが本番

一般的な進め方の解説では、3C分析やSWOT分析でターゲットを定め、コンセプトを設定する流れが示されます(丹青社の解説など)。フレームワーク自体は有効です。

ただし、この工程の成果物は言葉です。言葉のままでは、宿泊客には何も届きません。

宿泊客が触れるのは、予約サイトの写真、到着時の挨拶、部屋の匂い、アメニティの質感、朝食の並べ方です。コンセプトは、これらすべてに翻訳されて初めて体験になります。

翻訳されないまま掲げられた言葉は、館内に貼られたポスターと、Webサイトの1ページ目にだけ存在することになります。これが「ブランディングをやったが何も変わらなかった」の正体です。

決めた一行が、現場の判断に使われているか

コンセプトが機能しているかどうかは、簡単に確かめられます。現場の判断が、その一行から降りているかを見ればいい。

たとえば「静かに過ごす時間を提供する」と決めた施設なら、次が自動的に決まります。

  • ロビーのBGMの音量と選曲
  • チェックイン時の説明をどこまで短くするか
  • 客室清掃のタイミング(滞在中に入るかどうか)
  • 団体客を受けるかどうか
  • SNSに載せる写真に、人の写り込みをどこまで許すか

決まっていない施設では、これらが担当者ごとにばらつきます。フロントは丁寧に長く説明し、清掃は効率を優先し、SNS担当は賑わいを演出する。 それぞれが自分の職務としては正しいのに、宿泊客の体験としては一貫しません。

だからブランディングの実務は、コンセプトを決めた後に「何がOKで何がNGか」を部門ごとに具体化する作業が本体になります。ここを飛ばすと、言葉だけが残ります。

依頼先の型によって、担える範囲が違う

外部に頼むとき、型ごとに担当範囲が決まっています。

依頼先の型主に担う領域構造上の限界
再生・経営コンサル収支改善・組織・オペレーション表現と発信まで担う体制は持たないことが多い
設計事務所・内装会社建築・空間竣工で関係が終わる。運用後の体験は範囲外
ブランディング会社コンセプトとVIの設計設計図は出るが、現場での実装は別発注になりやすい
PR会社・OTA支援露出・送客届ける中身は施設側が用意する前提

どの型も、その領域では合理的に機能します。 収支が崩れているなら再生コンサルの知見が要りますし、建築は設計事務所にしかできません。

問題は、決めた一行を現場の判断に翻訳し続ける仕事が、どの型の担当範囲にも入っていないことです。放っておくと、この役割は総支配人や現場責任者に戻ってきます。日々の運営を回しながらやることになるので、たいてい後回しになります。

大手と同じ戦い方をしない

ホテルのブランディング事例として、大手の再生案件がよく引き合いに出されます。参考にはなりますが、そのまま真似ると苦しくなります。

大手が持っているのは、複数施設で共通のブランド基準を運用する仕組みと、それを支える人員です。1施設や数施設で同じことをやろうとすると、決めるべき項目の多さに対して現場の手が足りません。

規模の小さい施設が取るべき進め方は逆です。決める項目を絞り、絞った項目を全部門で徹底する。

  • 「うちは何を提供する施設か」を一行にする
  • その一行に関係する接点を3つだけ選ぶ(例:到着時・夕食・朝の時間)
  • 選んだ3つについて、具体的な基準まで決める
  • それ以外は当面、いまのままでよいと明示する

全部を変えようとして何も変わらないより、3つが変わるほうが宿泊客には伝わります。

発信を「集客」と切り離さない

もう一つ、宿泊施設で起きやすいのが、運営とマーケティングが分断されることです。

OTAの露出と料金は担当者が管理し、SNSは別の担当が投稿し、現場は接客をする。それぞれが独立して動くと、予約サイトで期待させた内容と、実際の滞在体験がずれます。 そのずれは口コミに直接出ます。

宿泊業は、口コミが次の予約を決める構造です。発信は集客の手段である前に、期待値の設計です。 期待値と体験が揃っている施設は、広告費を増やさなくても評価が積み上がります。

GIFTが関わった新潟県の宿泊施設でも、施設としての価値は十分にあったものの、それを伝えきる発信と運用が追いついていない状態でした。宿泊の目的を明確に定義し直し、WebとSNSを刷新、OTAの運用まで一体で担った結果、著名な国際建築アワードに選出され、海外のホテルガイドにも日本から選ばれるなど、評価が積み上がりました。建物も料理も、もともとそこにあったものです。

GIFTが、ホテル・旅館のブランディングで担うこと

私たちは、焼肉屋からカフェバー業態まで、飲食店などを自分たちでも直営しています。料理と接客を毎日回している会社なので、「きれいだけど現場で回らない提案」は出てきません。宿泊施設においても、朝食やレストランの体験は評価を左右する要素です。

担う範囲は、コンセプトの定義から、到着から出発までの体験設計、Web・SNS・撮影・OTA運用までです。設計と運用を分けないのは、決めた一行を現場に翻訳し続ける役割が、どこかに必要だからです。

これから施設をつくる段階も、業態を変える場面も、すでに稼働している施設も、PRODUCEとして立ち上げからその後の運用まで一貫して関わります。地域や観光の文脈を含む案件も扱っており、現地訪問とオンラインを組み合わせるため、東京から離れた立地でも問題ありません。

なお、店内の体験と外への発信を一本のコンセプトで繋ぐという考え方そのものは業態を問いません。飲食店のブランディングとは何かで整理しています。客室数の少ない宿についてはオーベルジュのブランディングもあわせてご覧ください。

コンセプトはあるが現場に落ちていない、という状態でしたら、そこを具体化するところからお手伝いできます。ご相談は無料です。

← ジャーナル一覧へ

Contact

まずは、いまの状況を
聞かせてください。

課題が固まっていない段階でも構いません。
これから開業される場合も、すでにお店がある場合も。
ご相談は無料です。