飲食店の開業コンセプトの作り方|シートを埋めても決まらない理由
飲食店の開業でコンセプトの作り方を調べると5W1Hのシートが出てきます。埋めても現場の判断に使えない理由と、決める順番、開業後にずれたときの直し方までを直営店の経験から整理します。
飲食店の開業準備でコンセプトの作り方を調べると、たいてい5W1Hのフレームワークとコンセプトシートが出てきます。誰に、何を、どこで、いくらで。
枠は埋まります。それでも、決まった気がしない。 そういう感覚を持ったことがあるなら、その直感は正しいです。
埋めたシートが機能しないのは、項目を埋めることと、判断ができる状態になることが別物だからです。
飲食店の開業コンセプトの作り方で、シートが機能しない理由
一般的な解説では、5W1Hや5W2Hで整理する方法が示されます(みんなの飲食店開業など)。枠組み自体は有効です。 考える漏れがなくなります。
問題は、埋めた結果がきれいな一般論になりやすいことです。
- ターゲット:30代の女性
- 提供価値:素材にこだわった健康的な料理
- 雰囲気:落ち着いた大人の空間
このシートを持って内装の打ち合わせに行くと、何が起きるか。設計者は判断できません。 落ち着いた空間の解釈は無数にありますし、30代女性という属性からは、椅子の座り心地も照明の色温度も決まりません。
コンセプトが機能しているかどうかは、それを使って判断が下せるかで決まります。 埋まっているかどうかではありません。
使えるコンセプトの条件は「捨てられること」
判断に使えるコンセプトには、共通する特徴があります。何をやらないかが決まっていることです。
「素材にこだわる」は、誰も反対しません。反対されない言葉は、何かを選ぶ役に立ちません。 一方で次のような形なら、判断が下せます。
- 「ひとりで来て、静かに食べて帰れる店」→ 大人数の予約は受けない、BGMは会話を邪魔しない音量に、相席はしない
- 「仕事終わりに一杯だけ寄れる店」→ コースは作らない、提供は5分以内、22時以降も入りやすい照明にする
捨てるものが書かれているかどうかが、使えるコンセプトの分かれ目です。 全方位に良いことを書いたシートは、開業後に何も決めてくれません。
同じ内容でも、書き方によって使えるかどうかが変わります。
| 書き方 | 例 | 開業後に判断できるか |
|---|---|---|
| 属性で書く | 30代女性向け | できない。椅子も照明もメニューも決まらない |
| 形容詞で書く | 落ち着いた大人の空間 | できない。解釈が人によって違う |
| 状況で書く | ひとりで来て、静かに食べて帰れる店 | できる。 予約・BGM・席配置が決まる |
| やらないことまで書く | 上に加えて「大人数の予約は受けない」 | 迷わない。 現場が自分で判断できる |
飲食店の開業でコンセプトの作り方に迷ったら、いま書いてある一行で、明日の判断が3つ下せるかを試してみてください。下せないなら、まだ言葉が足りていません。
決める順番を間違えると、後から動かせなくなる
開業準備は同時並行で進みます。物件を探しながら、内装業者と話し、メニューを考える。この中でコンセプトが後回しになると、決定の順番が逆転します。
物件が先に決まると、その広さと形に合わせて席数が決まり、席数から回転と単価が決まり、結果としてどんな店かが「決まってしまう」。選んだのではなく、条件から逆算されただけの店になります。
順番としては、こうです。
- 誰に、どんな時間を過ごしてほしいかを決める
- そのために必要な体験の条件を出す(席の間隔、滞在時間、提供のスピード、音量)
- 条件を満たす物件と内装を探す
- 体験に合うメニューと価格を組む
- 何をやらないかを明記する
3番目より前を飛ばして物件から入ると、後から修正できません。 内装は工事してしまえば数年動かせず、席数は物件の形で決まります。
もちろん実務では、良い物件が先に出てくることもあります。その場合も**「この物件で、さっき決めた体験が成立するか」を判定する形**なら順番は保てます。
開業前に決めたことは、開業後に必ずずれる
もう一つ、開業準備の段階では見えにくいことがあります。コンセプトは、開業した瞬間から現実とずれ始めます。
想定していた客層と違う人が来る。滞在時間が想定より長い。人気が出るメニューが予想と違う。これは失敗ではなく、必ず起きることです。
問題は、ずれたときにコンセプトを更新するのか、現場を戻すのかを決める人がいないことです。決める人がいないと、現場が個別最適で動き始め、掲げた一行は誰も見なくなります。
開業後の3〜6ヶ月が、いちばん重要な時期です。 ここで現実に合わせて定義を磨けば、コンセプトは資産になります。放置すると、Webサイトの1ページ目にだけ残る言葉になります。
この構造は改装でも同じです。詳しくは飲食店のリニューアルが失敗する理由で扱っています。
融資と、コンセプトの関係
事業計画書にコンセプトを書く場面もあります。金融機関が見ているのは、言葉の格好よさではありません。
- その店に、根拠のある需要があるか
- 客単価と回転の想定が、コンセプトと整合しているか
- やらないことが決まっているか(=計画が絞られているか)
「幅広い層に来てほしい」と書かれた計画は、誰にも刺さらない計画として読まれます。 絞ったほうが、審査でも通りやすくなります。
GIFTが開業時に、物件より先に決めていること
私たちは、焼肉屋からカフェバー業態まで、飲食店などを自分たちでも直営しています。自分たちの店を、自分たちで立ち上げてきました。 直営のバー3店舗では、機能では同質化しやすい市場で選ばれるために、店舗ごとにコンセプトを定義し直し、結果として3店舗で年商約2億円に達しています。
だから開業のご相談では、図面や物件より先に次を決めます。
- 誰の、どんな時間をつくる店か(属性ではなく、来店の状況で定義する)
- その体験に必要な条件は何か(席の間隔、滞在時間、音、提供速度)
- 何をやらないか(受けない予約、作らないメニュー、狙わない客層)
そのうえで、空間・メニュー・接客・発信を同じ方向に揃えます。開業日から逆算して、PRODUCEとしてお受けしています。開業後にずれを埋め続ける工程まで、同じチームで続けられます。
コンセプトの考え方そのものは飲食店のブランディングとは何かで整理しています。
まだ物件が決まっていない段階でも構いません。むしろ早いほど効きます。 どんな場をつくるかが決まっていれば、物件の見極めもそこから判断できます。ご相談は無料です。
まずは、いまの状況を
聞かせてください。
課題が固まっていない段階でも構いません。
これから開業される場合も、すでにお店がある場合も。
ご相談は無料です。